2020 best part1 Darkness and ....

闇と血に塗れた胡蝶花咲き乱れし時代と2020を振り返って思うものがどれほどいるかはさておき、確かに2020年にそういう側面があったことを否定することは出来ないだろう。パンデミック、相次ぐ自死、国内外分断…。2020に限ったトピックでは決してないが、2020において認識を新たに、反省する必要があったトピックである。そんなシビアな現実の傍ら、闇と血とその先の光とを切実に響かせる音楽は相も変わらず美しく鳴り響いていた。あなたを何処までも一人にする音楽たち。その一端をここに記す。

8. 第七作品集 / downy

 

 

 メインコンポ―サーを失い、期待半分、聴くのが怖い気持ち半分で聴いてみた本作ですが、そんな心配いらずの快作。downyは変わらずdownyでした。ポストロックを基調に緻密に構築された、実験とポップネスの融合というdownyらしさを丁寧にパッケージングしつつ、衰えぬクリエイティビティに今後の作品も楽しみになるような作品です。

7.WE ARE CHAOS / マリリンマンソン

 

WE ARE CHAOS

WE ARE CHAOS

 

 聴いてまず思い浮かぶのが、古き良きグラムロック。このグラムロック感は新鮮でありながら、よくよく振り返ってみればマンソン御大の奏でて来た音やパフォーマンスはショービジネスに開かれたこてこてのロックという意味でずっとグラムロックであったと言えるように思えます。つまり今作はマンソンをマンソンたら占める矜持を煮詰めた快作だと言えるのではないでしょうか。

6.Folkesange / Myrkur

 

Folkesange

Folkesange

  • Myrkur
  • ワールド
  • ¥1528

 

 北欧ゴシックメタルの印象が強かった彼女ですが、本作ではケルトフォーク。MVを見れば分かる通りゴシックらしさはしっかり押さえつつ神聖でメロディアスな名曲の連続に慟哭を禁じ得ない。FF等のゲーム音楽やアニメーションの血が強く流れている日本人の琴線にしっかり触れてくる一枚。「リゼロ」とかで流れてそうですよね。

5.Flowers of Evil / Ulver

 

Flowers of Evil

Flowers of Evil

  • Ulver
  • ポップ
  • ¥1528

 

 こちらもドゥームなメタルを主軸とするバンドが転身して見せた一枚。哀愁の香ばしいエレポップが色んな所をそそります。セピア色の辛い思い出が一枚の写真のように思い浮かび、憎しみ哀しみ恨みでそれらを塗りつぶしていく聴き心地で聴き終わるころにはあなたもきっと惡の華

4.ABRACADABRA / BUCK-TICK

 

Abracadabra

Abracadabra

 

 群馬の大御所。膨大なディスコグラフィを持つ彼らですが、その中でも快活さに貫かれた作品。「極東より愛をこめて」の頃を思い出します。中でも先行配信された「ユリイカ」は初期のビートロック路線を彷彿とさせる。しかし、常に時代と向き合い闇を潜り抜けて来た者の歌う「LOVE&PEACE」は一味違う。憂鬱を吹き飛ばす血肉漲る一枚。

3.Miss Anthropocene / Grimes

 

Miss Anthropocene

Miss Anthropocene

  • Grimes
  • エレクトロニック
  • ¥1528
Miss Anthropocene (Deluxe Edition)

Miss Anthropocene (Deluxe Edition)

  • Grimes
  • エレクトロニック
  • ¥1528

 

 アメリカのサブカル少女ことGRIMES嬢。一時のハイプ感を終え、一層のダークネスを持って帰ってきました。チープで味のあるエレポップなのですが、ねねちゃんよろしくぬいぐるみを藁人形にするかのような怨念がましさが堪らないし、一筋「delete foever」のような曲を入れてくるあたり、オタク心理を分かっておる。今後を感じさせるとか諸々は一旦おいておいて、ありがとう、GRIMES。

2.Punisher / フィービーブリジャーズ

 

Punisher

Punisher

 

 ポップスの中に堂々とかつさりげなく入れ込まれたゴシックエッセンスは、ビリーアイリッシュを思い起こさせます。軽やかに、しっとりとした肌触りのこもった音質に牧歌的で自由なメロディが美しい。しかし彼女は「I KNOW THE END」なわけで、恐らく込めている情念は戸川純にも匹敵する重量かと。2020を語る上で外せない名盤。

1.Never Let Me Go -ep- / Ghostly kisses

 

Never Let Me Go - EP

Never Let Me Go - EP

  • Ghostly Kisses
  • ポップ
  • ¥917

 

 普段あれこれ厭らしく作品にケチをつけて分析しているけど、大好きな声に好みのメロディが乗っているだけで十分に思ってしまうことってありませんか。カナダのシンガーソングライターのEP。北国ならではの凍えるほどの寂寥感と近い冬明けを思わせる穏やかな光。最後の曲「STAY」で歌われる素朴で切実な想いに胸を打たれながら、今日も吐く息白く、家路につこう。